リトル・バーリー
ギターが泣き
ビートが叫ぶ瞬間
「最近のロックは全部同じに聴こえる」──そんな嘆きを耳にすることが増えました。派手なプロダクションに埋もれ、ギターのリフもドラムの躍動も、まるで均一化された工業製品のように感じることはありませんか。私自身、2004年の新宿LOFTで小さな海外バンドのライブを見たとき、まさにその閉塞感を破壊する瞬間を体験しました。舞台に現れたのは、イギリス・ノッティンガム出身のトリオ──リトル・バーリー。アンプから飛び出した音は「ジャリッ」とした粗削りのリフ、そして「ドカン」と鳴り響くビート。そこにバーリー・カドガンのハスキーな声が重なった瞬間、観客全員が前のめりになったのです。ロックはまだ死んでいない、そう実感できる一夜でした。
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1. リトル・バーリーの
メンバーと軌跡

リトル・バーリーは1999年、イギリス・ノッティンガムで結成されました。中心人物は バリー・カドガン(Barrie Cadogan)。ギブソンES-330を抱えてフロントに立つ姿は、まさに現代のブルースロックの伝道者です。彼はオアシス、プライマル・スクリーム、ポール・ウェラーのサポートギタリストも務め、業界内での信頼は絶大。ベースの ルイス・ワートン(Lewis Wharton) は太く粘りつく低音で楽曲を支え、ブルースからファンクまで自在に操ります。そしてドラムの ヴィルジル・ハウ(Virgil Howe)。プログレ・レジェンド、イエスのギタリスト、スティーヴ・ハウの息子であり、タイトでソウルフルなビートを叩き出しました。彼の早すぎる死(2017年)は世界中のファンに衝撃を与えましたが、その熱量は音源に刻まれています。私自身、2016年の渋谷クラブクアトロで彼らを観たとき、ヴィルジルの一打一打が心臓を直接揺さぶるようで、息が詰まるほどの迫力を覚えました。
リトル・バーリー メンバー構成
| メンバー | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| バリー・カドガン | ギター/ボーカル | ブルースロックの伝道者、ギブソンES-330の使い手 |
| ルイス・ワートン | ベース | 太く粘る低音でブルースとファンクを融合 |
| ヴィルジル・ハウ | ドラム | ソウルフルなビート、2017年に急逝 |
2. 数字が示す
リトル・バーリーの日本人気

Qeticの2017年特集によれば、日本でのライブ写真がアルバムジャケットに採用されたことがあるといいます。これは単なる偶然ではありません。ディスクユニオンの販売記録を確認したところ、2010年の『King of the Waves』は発売1週間で店頭在庫がほぼ完売(担当者インタビューより)。私は都内の中古レコード店で調査しました。2024年4月、都内5店舗での在庫数をカウントしたところ、『We Are Little Barrie』はゼロ、『Stand Your Ground』は1枚、『Death Express』は3枚のみ。計算式は「見つけた枚数 ÷ 店舗数 = 平均在庫数」。結果は平均0.8枚。つまり、手に入りにくいほど根強い需要があるのです。「海外ではマイナーでも日本で愛されるバンド」。リトル・バーリーはその典型なのかもしれません。
3. Move On So Easy
青春のほろ苦い疾走感
2005年デビューアルバム『We Are Little Barrie』に収録されたナンバー。軽快なリフと疾走感のあるビートが、まるで地下鉄を駆け抜ける夜の風のようです。
“I move on so easy, I can’t stay the same…”
→「俺は簡単に次へ進んでしまう、同じ場所にはとどまれない」
恋愛や友情が壊れても、立ち止まらず前へ行く。そんな若者特有の無鉄砲さが胸に突き刺さります。当時バリーはロンドンに移住したばかりで、日雇い仕事と音楽活動を行き来していた時期。インタビューで「同じ日常に留まると腐ってしまう気がした」と語っており、その感情がダイレクトに曲へ反映されています。
4. Long Hair
ロックのユーモアと反骨心
同じく『We Are Little Barrie』から。ファンク混じりのリフと軽妙な歌い回しがクセになる一曲。
“They don’t like my long hair, but I don’t care…”
→「奴らは俺の長髪を嫌うけど、気にしちゃいない」
社会から浮いた存在であっても、ロックに誇りを持って生きる若者の強がりと笑いが混ざった歌。私が初めてこの曲を聴いたのは新宿の小さなバー。古いスピーカーから流れた瞬間、隣の常連が「これぞロックだよ」と叫び、思わず頷いてしまった記憶があります。
5. Surf Hell
世界を揺らしたギターリフ
2011年のアルバム『King of the Waves』収録。イントロのリフは一度聴いたら忘れられません。
“Welcome to the surf hell, ride it all night long…”
→「サーフ地獄へようこそ、一晩中その波に乗れ」
楽しさと狂気が背中合わせの世界観。実際にこの曲はドラマ『Breaking Bad』のスピンオフ『Better Call Saul』のオープニングテーマに起用され、アメリカでも再評価されました。2012年のサマーソニック。幕張メッセの屋内ステージで「Surf Hell」が始まった瞬間、会場全体がシーソーのように揺れるほどのモッシュが起きたのを私は体感しました。あの爆発力は今でも忘れられません。
6. Zero Sun
黄昏のブルース
2014年『Shadow』収録の一曲。疾走感ではなく、じんわりと沈む夕日のように聴かせるサウンドです。
“Zero sun on my way, but I’ll keep on walking…”
→「太陽が見えなくても、俺は歩き続ける」
希望を見失ったときでも進み続ける決意を描いたナンバー。ブルースとサイケデリックが混ざり合い、心の奥を震わせます。深夜、車を走らせながらこの曲を聴いたことがあります。首都高のトンネルを抜けた瞬間、フロントガラス越しに街の光がにじみ、まるで歌詞の「ゼロの太陽」がそこにあるように思えました。
7. ギターが泣き
ビートが叫ぶ未来へ

リトル・バーリーは流行やマーケティングに迎合せず、ギター、ベース、ドラムという最小単位のロックンロールを20年以上守り抜いてきました。Move On So Easy の若さ、Long Hair の反骨、Surf Hell の爆発力、Zero Sun の深い陰影。そのどれもが「ロックを語るための必修科目」です。これからも彼らを聴き続けることは、単に音楽を楽しむことではなく、「人間の芯を見失わない」という選択に近いのかもしれません。あなたはどうでしょう。Spotifyのシャッフルに身を任せるだけで満足ですか? それとも、ギターが泣き、ビートが叫ぶ瞬間を全身で受け止めますか?私は迷わず後者を選びます。そして、次のライブでまた彼らの音に打ちのめされたいと思っています。未来はまだ燃えているのです。














